アダルトサンスポ・フジ
投稿・私の性告白

先生と私(2)

「今夜、ご飯に連れて行って下さい」

先生と私(2)
イラスト・幸杏奈

 《ショッピングモールで、高校2年のときに通っていた塾の弘樹先生を見かけた。ぽっこりのお腹、少し伸びた髪…すっかりさえない中年男に変貌して…》

 しばらくして、奥さんが現れた。驚くほどこの空間になじんでいる、普通の女性だった。
 3人が歩き出し、なぜか私は後を追いかける。
 奥さんと子供がトイレに行き、また弘樹先生がひとりになった。
 「先生…」
 思い切って声をかける。
 「…ん」
 「弘樹先生ですよね」
 「今は先生じゃないけど」
 お前は誰だというきょとんとした顔で、必死に記憶をたどっているようだ。
 「覚えていませんよね、15年ほど前に、塾で真衣って子が先生を大好きで」
 「真衣…あ、真衣ちゃんね、覚えているよ」
 「その真衣って子といつも一緒だった優香です」
 「ああ、優香ちゃん、久しぶりだね」
 精いっぱいの愛想を振る舞いながら、私のことを思い出そうとしているのだろう。
 「先生、私、大学を出て、今ここで働いてるんです。よかったら来て下さい」
 私はバッグから名刺を出して、先生に強引に渡した。
 「知り合いの方?」
 奥さんと子供が戻ってきた。
 「こんにちは、昔に塾でお世話になっていた元生徒です」
 私も愛想笑いをしながら会釈をする。
 「先生、じゃあこれで」
 「おう」
 先生との会話はそれだけだった。
 今の先生には、誰も声をかけないのかもしれない。
 それでも、先生という響きは心地よいはずだ。
 どうでもいいことが、思わぬ再会で気になり始めた。
 15年の歳月が過ぎても、過去の自分に一瞬で戻れるのは、女だけなのかもしれない。
 それから1カ月が過ぎ、朝、医院の玄関を掃除していたときだった。
 「杉本」
 聞き覚えのある声が背後からした。
 「あ、先生!」
 スーツ姿の先生は、意外と悪くない。
 「杉本優香。ずいぶん変わったな」
 「少しは思い出してくれたんですね」
 「ははっ、まあな。実はこの近くの薬局が得意先で、この前をよく通るんだ」
 「そうなんですか、今まで会わなかった方が不思議ですね」
 「いや…見てたんだ」
 「だったら声をかけてくれたら良かったのに」
 「なかなかタイミングがなくてな…」
 「先生、じゃあ今日の夜、ご飯に連れて行って下さいよ」
 「え? 今日?」
 「ダメですか?」 (つづく)

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